ブログ アーカイブ | いしかわ脳とこころの診療所

うるま市石川 精神科・心療内科の診療所です

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お役立ち医学研究紹介(4)マスクの予防効果

いしかわ脳とこころの診療所 2020年06月3日 カテゴリー: ブログ

マスクの風邪予防効果って本当にあるの?

最近、産業医活動中に聞かれたマスクの効果について調べましたので、論文を掲載しておきます。

現在もっともエビデンスレベルの高い、マスクによる風邪の感染予防効果を調べた論文がこちらです。
https://www.medrxiv.org/content/10.1101/2020.04.01.20049528v1 (英文)
感染者も健常者も双方がマスクをつけると、感染リスクは減少する傾向は見られたものの、明らかな差ではなかったようです。

一方、こちらの論文では、風邪感染者がマスクを着用することでウイルスの排出は減ることが確認されています。
https://www.nature.com/articles/s41591-020-0843-2 (英文)

風邪の原因となるウイルスには多くの種類がありますが、その感染経路は主に「飛沫感染」と「接触感染」です。マスクの着用により飛沫感染は防げるものの、マスクからの接触感染が増加することで感染予防効果がはっきりと表れなかったことが推測されます。

マスクの使用中、使用後はフィルター部分には触れない。着脱時はゴムの部分を持ち、フィルター表面に触れないようにしてそのまま廃棄する。触れた場合はすぐに手を洗う。など、適切な接触感染対策を行うことで、予防効果を高めることができるでしょう。

お役立ち医学研究紹介(3)風邪予防

いしかわ脳とこころの診療所 2020年04月13日 カテゴリー: ブログ

善玉菌で風邪を予防できる?

 これまでの2回のブログで、痩せるための食事や健康維持のための食事について紹介してきました。

その流れで今回は消費エネルギーを増やすための食事について紹介しようと思っていました。


 しかし、沖縄県内でも新型コロナウイルス感染症の流行が明らかになってきているので、少し関連するかもしれない内容の論文を紹介することにします。


“Probiotics for preventing acute upper respiratory tract infections”

 急性上気道感染症を予防するためのプロバイオティクス


 こちらは、Cochrane Library(コクランライブラリー)という、証拠能力の高い論文を集めて解析しなおし、より証拠能力を高めた論文を掲載するウェブサイトに載っています。(2015年更新)


 「急性上気道感染症」の上気道というのは、簡単に言えば鼻から喉までのことで、気管や肺は含みません。つまり急性上気道感染症とはいわゆる風邪のことです。

 今回の論文の定義では病原体は限定していませんので、細菌もウイルスも入ります。一般的なコロナウイルスやインフルエンザウイルスも含め、風邪に対して善玉菌(プロバイオティクス)が予防として効果あるのかどうかを調べています。

 結果として・・・
善玉菌を摂取したほうが、風邪をひいた人数、風邪の期間、抗生物質が使用された回数、学校の欠席が少なくなりました

 ただ元の論文に証拠能力が弱いものがあり、この結果のエビデンスレベルは低いと判定されています。また研究対象の多くは子供で、スポーツ選手は対象から外されています。

 私見ですが、今回の論文は証拠能力が低いとはいえ、善玉菌はヨーグルト等の食品や医薬品として安価に手に入り、副作用もほぼありません。風邪以外に対しても効果がある可能性があります。子供はもちろん、成人も普段から善玉菌を摂取して損はないと思います。

https://www.cochranelibrary.com/cdsr/doi/10.1002/14651858.CD006895.pub3/full/ja

 で英語の全文と日本語のまとめが読めます。

お役立ち医学研究紹介(2)油ものは悪者?

いしかわ脳とこころの診療所 2020年02月4日 カテゴリー: ブログ

普段の食生活で油ものは控えるべき?

 前回、痩せる為にはどのような食事が良いかについての研究を紹介しました。では、普段の健康維持のための食生活ではどういった事に気をつければいいのでしょうか。

 今回紹介するのは“Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study” (5 大陸 18 カ国における脂質および炭水化物の摂取量と心臓血管疾患および死亡との関連性:前向きコホート研究)と いう論文。 

 現行のガイドラインでは普段の食事で脂質はカロリー換算で30%未満に抑えることが推奨されていますが、この論文は脂質摂取に関する新たな事実を伝えています。
 

 この研究では各国から13万人を超える人の食事データを集め、7年位追跡して調査しています。
 その結果、

  • 炭水化物摂取量が多いグループで死亡率が高いこと
  • 脂質は種類に関わらず摂取量が多いグループが死亡率が少ないこと、
  • 飽和脂肪酸(肉に多い)の摂取量が多いグループが脳卒中が少ないこと
  • 脂質は種類に関わらず心血管疾患と関係しないこと

 が示されました。

 では、「全ての食事を脂質だけにすればいいのでは?」と思えますが、実際の食生活で脂質だけを摂取することは難しいでしょう。常識の範囲で、「脂質(魚・肉の脂身、植物油など)を制限する必要はなく、その分炭水化物(ごはん、パン、麺、甘いおやつ、砂糖など)は少し減らして、バランス良く食べるのが良い」と解釈すると良いと思います。 

 また、別に紹介する機会があるかもしれませんが、極端な炭水化物制限(いわゆるノンカーボダイエット)は死亡率が高くなるという研究もあります。あくまでもバランス良く、ということが大切ですね。

 なお、この論文は全文を読むのは有料ですが、要約は無料で読めます。図表付きで日本語解説をしているPDFも公開されています。

お役立ち医学研究紹介(1)痩せるための食事

いしかわ脳とこころの診療所 2019年10月13日 カテゴリー: ブログ

体重を落とすときは油ものを控えるのがいいの?

 健康診断を受けて体重を落とすように指導された事や、洋服のサイズが合わなくなってきて痩せようと決意した事、主治医に体重を落とすよう言われた事がある人は多くいるのではないでしょうか。
 ストレスをやけ酒ややけ食いで紛らわせて太ってしまったり、心療内科・精神科で処方されるお薬の影響もあって太ってしまう事もあると思います。

 では、どうやって体重を落とすのがいいのでしょうか。運動しますか?油ものを控えますか?おやつを止めますか?

 

 さて、このときに参考になるのがこれから紹介する研究です。

Weight Loss with a Low-Carbohydrate, Mediterranean, or Low-Fat Diet(低炭水化物食、地中海食および低脂肪食の減量効果の比較)」
I. Shai and Others
N Engl J Med 2008; 359:229-241 DOI: 10.1056/NEJMoa0708681

 無作為化対照試験(DIRECT=Dietary Intervention Randomized Controlled Trial)というメジャーな試験方法で行われた研究です。(Eを入れてDIRECTと略したのは無理やり感が・・・。)

 

 以下、内容を簡単にまとめます。

 中年の肥満者を「低脂肪食」「地中海食」「低炭水化物食」の3群にランダムに分けて2年間続けて比較。

 その結果、「地中海食」「低炭水化物食」群のほうが「低脂肪食」群より痩せた。HDLコレステロール(善玉)は低炭水化物食群で低脂肪食群より増え、中性脂肪(トリグリセライド)は地中海食群・低炭水化物食群で低脂肪食群より減った。空腹時血糖については糖尿病がある人でみると地中海食群が低脂肪食群より改善していた。

 以上より、体重を落とすとき、ただ油ものを控えるよりは、脂質異常症(高脂血症)のある人は「低炭水化物食」で、糖尿病の人は「地中海食」でのダイエットがオススメです。

 本当は運動も併用するといいのですが、またその研究は別の機会に紹介します。

 

 なお、原文も日本語訳もインターネットで検索すると出てきますので、具体的にどんな食事内容だったのかはそちらを参照して下さい。

お役立ち医学研究紹介~はじめに~

いしかわ脳とこころの診療所 2019年10月12日 カテゴリー: ブログ

 ここでは、こころの不調や生活習慣病の予防方法、新しい治療法など、皆様の健康な生活に役立つ医学研究を主にご紹介していこうと思います。

 まず、それらの研究を参考にする上で、一番大切な考え方からお伝えします。


 世の中には情報が溢れています。友人の体験談、テレビで放送された有名人や有名医師の話、本やインターネット・・・等、情報源はいくらでもあり、情報は日々刻々と増えています。
 それら情報の証拠には強弱があります。情報を利用する側としては、最も強い証拠がある情報を参考にしなければいけません。

 

  そこで医療の分野では、どういった場合にどのような治療法や薬が最も効果があるのか、多くの人を対象に調査研究を行っています。その調査研究によって、薬や治療方法、検査方法などがよいと判断できる強い証拠が生まれます。 医師は個人的な経験や勘に頼らず、そうした幅広い調査研究に基づいて、診療をしています 。

 

 研究も莫大な数が日々行われ積み重なっています。ここでは、できるだけ科学的根拠に基づいて行われた、最も証拠の強い研究をご紹介していくように努めます。

 

 ただし、どんな調査研究であっても、それは一般の多数の人を対象に行われたものであるため、必ずしもそのまま自分に当てはめて考えて良いわけではありません。情報を利用する人それぞれで、価値観や社会における環境も異なるからです。

 

 以上のことをご理解の上、お読みいただけると幸いです。

 ご質問があれば、診察の際にお気軽にお尋ね下さい。

 

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